第1章

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「彩ちゃんって誰」 素直に聞き返すと、和哉は「知らないのかよ」と呆れた顔をした。 「彩ちゃんだよ、中野彩音」 「だから誰?」 「7組で、成績トップの超可愛い子」 「…あぁ」 成績トップと言われ、やっとわかる。 中野彩音。 確か吹奏楽部の子だっけ。 かなりモテるって聞いたことがある。 「やっとわかったか…可愛いよなー」 「うん、まぁ」 可愛い、と思う。 綺麗な茶色の髪に、整った顔立ち。 遠くからでもよくわかるな。 長い髪は綺麗に結われ、高い位地で揺れている。 「俺も7組になりてぇなぁ」 恋する乙女の様に手を組み窓の外を見つめる和哉。 正直とてもキモい。 和哉の容姿は普通にしていればイケメンだ。 黒髪が似合う、爽やかなイケメン。 …普通にしていればの話だが。 中身は若干おっさんが入ってるというか変態。 そんな変態が乙女な格好してるんだぞ? ………うん、吐いてもいいか? 「敦也?口押さえてどうした?」 「いや、気にするな」 頭にハテナを浮かべる和哉をどうにか前を向かせる。 俺のことを見ていないとしても、これが視界に入っていれば本当に吐きそうだったから。 僕は、ふぅっと息を吐き出したあとに再び窓の外をを見た。 その目に写るのは いつの間にか景色ではなくなっていた。 …
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