その1

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「聞いたぁ?ゆうべ、夜警のひとが見たんだって。幽霊がピアノ弾いてるの」 いつもの時代であろうが、学校の怪談話に、音楽室は欠かせない。 高校なのに…(笑) 曰く、「ピアノがポロンなるんで、なかをみたら、女子のバラバラ死体が入ってて、滴る血が鳴らしたんだってさ。ここにいるって知らせたかったのね、きっと」 曰く、「あのバッハやハイドンの絵。音程違うと、ジロリと睨むそうよ」 そして今は、ピアノを弾く幽霊の噂でもちきりであった。 「それって、演奏会直前に死んだ生徒の霊なんだってさ」 「そのピアノ聞いた人は、7日以内に狂っちゃうんでしょ」 「え。私は死ぬって聞いたけど」 噂はどんどん膨らんでいく。 「私が聞いたのは、ちょっと違うな。弾いてるのは、死んだ音楽のセンセイなんだってさ。ホラ、あの人」 そう言って、壁の額を示す。 ──どうしてそんな話になるのだろう。 「あの隅っこの?前から気になってたんだ」 「あ、私も。有名な作曲家の中に、一枚だけ混じってるじゃん。意味ありげにさー」
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