第一章

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『好き、文月の一番になりたいの』 今日も送られてくる告白メール。真剣な想いを告げてくれる、そんな想いを断るのは、さすがに良心が痛む。 『ごめんね』 応えるわけにはいかないんだ、また今日も、鳴海の想いを、断ち切った。 いつもならここで、いいの、だとか、それでも好き、だとか返ってくる、今日もそうだと思っていた。 『文月は贅沢だよ』 正直、予想外だった。そして同時に、心臓が怖いほどに跳ねる。 今まで、何度断っても許されてきた、だから、今度だって…。 冗談だと思った。思いたかった。頭がガンガンと痛む。目頭が熱く、痛い。鼻の奥もつんと痺れる。 『周りには文月のこと好きな人がたくさんいるのに誰にも応えない、贅沢だよ』 次のメールがきた。かあっと顔が赤くなり、目からは涙が零れる。 布団の中に潜って喉の奥から嗚咽が漏れるのを耐えた。我慢すればするほど、喉が苦しくなり、更に涙が零れた。 『ごめんね、それでも、応えられない』 やっとの思いで文字を打ち込み、その日はメールをやめた。 次の日、鳴海から、こちらこそごめんなさいという謝罪のメールが入っていた。 .
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