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元々私は普通の異性愛者だった。けど、その気になれば女の子だっていける、そういう性格をしていた。
そしてまさに、今がその時だった。
『私は、秋(しゅう)のことが好きなんだ』
秋とは、彼女のネット上での名前。この時は、ホントの名前なんて知らなかった。
ホントの名前なんて、どうでもよかった。知らなくても、私は彼女のことが好き、それだけ。
『久しぶりにメールしたいなぁ…』
秋はリアルが忙しいらしく、中々絡むことが出来ない。こんなふうに、メールしたいと思っても、忙しかったら悪いし、と諦めてしまう。
「宮野!」
「聞いてんのかよー」
不意に、聞き覚えのある声が耳に届いた。
クラスメイトの木岡奈菜と平田涼也だ。ごめん聞いてなかった、と軽く返しておいた。
木岡はグループの中でも中心的な存在で、平田は男の割になよなよしくて女の子みたいだ。
そして基本地味な私。この三人でつるんでいることが多かった。はたから見れば異色なんだろうな、と思う三人だと思う。
まあ私達も別に理由がなくつるんでいるわけではない。
このグループであるための規律のようなもの。まあ別に破っても害はないだろうが。
その規律というのが
異性愛者ではないこと
だった。
木岡は同性愛者。
女の子でありながら女の子が恋愛対象。
平田も同性愛者。
男の子でありながら男の子が恋愛対象。
そして私はその中間。つまり両性愛者ということになる。
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