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弱くて脆い、なのに真っ直ぐで人を惹きつける、いつの間にか巻き込む。
笹丘鈴とは、善人であるが故に一癖もふた癖もある人物だ。
自分のケツも自分で拭けない輩はいっそ動くなというのが仁科の心情だが、踏み込んでは傷つき、深追いしては泣く、鈴は何故か捨て置けない存在だった。
零は。
人を疑い、人を信じず、人を諦め、期待しない、零は。
人を求め、存在の許しを請い、自らの矛盾を消化できずにいる、彼は。
そんな彼女に救われたのだろう。
零が鈴を守ろうとする。
その執着を、受け止める事で鈴は零を守っているのだ。
互いにしか通い合わない「何か」の中で。
動きを止めた零の背中をぼんやりと見つめて、仁科は思った。
自分はきっと、彼らがほんの少し、羨ましいのだ‥‥。
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