魔法が醒める時

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「九音寺くん!」 勢い込んで零の腕にしがみつく。 走り通しで息の上がった鈴を、眼鏡越しでない零の美しい黒い瞳が静かに見下ろした。 「なんだ。来たのか」 そっけなく言う零の顔は、眼鏡がないせいかいつもと少し印象が違うと鈴は思った。 仁科から電話をもらって、何かに駆り立てられるようにしてここまで来た。 零が呼んでいる。 そう思ったのは、夢見のせいもあったかも知れない。 今、目の前にいる零はいつもと変わらぬ表情で。 だけどそれが、鈴にはひどく痛々しく見えた。 「九音寺くん、眼鏡は」 「私が預かっています」 問いかけにすかさず答えたのは仁科だ。 取り落とした物を拾ったのか、眼鏡は少し汚れていた。
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