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「・・・・それで仁科さん。高村さんは」
一度思考を切り替えて、鈴は仁科に水を向けた。
仁科は電話の冒頭で、“高村雪江の遺体が出た”と、そう告げた。
(ならばその亡骸は)
立ち入り禁止を示す黄色のテープの向こうに見える、ブルーシートで覆った区画が遺体のある場所なのだろうか。
何気なく気にした鈴の視線の行方を読んで仁科が首を振った。
「いえ。あそこにはもう高村さんはいません」
ご遺体はすでに警察に運ばれました、と仁科が続ける。
「今朝方、あの一角で高村雪江さんらしき女性が亡くなっているのを地元の住人が発見しました。
女性はあの大木に寄りかかるようにして、こう、膝を立てて座っていて。
通りがかった住人は、初め酔っぱらいが眠っているのだと思ったそうです。
放って置いては凍え死んでしまうと、声をかけるために近づいた所、肌に生気はなく、腹部に刃物で刺されたような跡と出血の染みがあったので、驚いて警察に連絡したと」
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