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「心を奪う?」
「えぇ」
「お前が……私の?」
「はい」
アラジンのいぶかしげな表情の奥から、面白いおもちゃを見つけた時の、いたずら好きな子供の顔が浮かび上がってきた。
「はははっ……お前は本当におもしろい事を言うな。本気か?」
「本気です」
引く訳にはいかない……視線に力を込めた。
「そうだな……本気にならねばお前は生きて帰れそうにないからな」
少し皮肉を含んだ笑いを向けて、アラジンは楽しそうに言葉を続けた。
「だがどう見てもお前と私は同性のようだが……背に腹は変えられないか?」
「はい」
この人と対峙しているとあまり言葉を多く語る気にならない。かといって息詰まりを感じる訳でもなく、またも不思議な感覚に酔わされる気がした。
「フッ……まあいい。私にはそんな趣味はないが、所詮形など元より意味のないもの……お前にその自信があるのならやってみろ。ちょうど退屈していたところだ」
最後の方の言葉を言いながら、アラジンはひらりと立ち上がった。
動きに無駄がない。それは指先一つから目線の運びにいたるまで。
「行くぞ。ついてこい」
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