あんた誰?

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ふと境田が椋に目を配ると、椋はお腹が痛そうに抱え込んでいた。 「おい、お前…何腹押さえてんだよ。腹痛か?」 「いえっ…だって抉るって…想像しただけで痛くなってきました」 「その何百倍の痛みの中、彼女は死んでいったんだ」 「…はい」 「しっかりしろ」 時々境田は、彼からは想像出来ないような、言葉を発する事がある。 椋はその言葉に、自分の恥ずかしさを覚えた。 ふと視線を廊下の方にやると、また何か気持ちが悪い感覚を覚える。 「部屋が荒らされた形跡はありませんでした。えぇ…金目のものが取られている様子もありません。恐らく物取りの犯行ではなく…彼女自身に対して怨みがあったもの…かと」 その情報をもってきたのが田中。藤間班のメンバーの一人で、境田に憧れている。 「そうか…」 「はい。それから遺体に争った形跡は無く、抵抗する間もなく刺されたものと思われます。」 「リビングまで入ってるのに?」 突拍子もなく出た声に田中は思いっきり顔を歪めた。 声の主はわかっている。 「遅い登場のくせに随分偉そうだな」 「なぁによ、その言い方」 「うるさい、チビが!」 「はぁー!!?あんただって……… あぁー後で覚えてろよ!!」
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