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藤間の携帯が鳴った。
何となく相手かわかっている藤間は、一呼吸おいてから通話ボタンを押した。
もう車の中に入って、寒い外界からは逃れられている。
「……はい、藤間です」
「私だ」
わかっています。と心の中で返事をする。
相手は言葉の最後までハッキリと発音をし、耳から携帯を話したくなるほど大きな声で言った。
「起きたか?」
「起きました」
「もう側にいるのか?」
「まだ、いません。今用意をしているところです」
「そうか…」
そこでやや言葉のふしが弱くなった。
「…総監?」
「椋の声が聞きたい」
「バレますよ…?」
「………………………」
「総監?」
「ふん!ばぁか!!」
ばぁか?!子供か?!と思っている間に通話は切れる。
今度も耳が痛くなるほど、すごい切り方だった。それを聞いて、わざわざ自宅からかけてきたのだと、藤間は呆れる。
「仕事してくださいよ…全く」
ふぅと溜め息をついて携帯を置いた所に、タイミングよく椋が車の窓をノックした。
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