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わたしはその違和感の原因を知るため、視線を辺りに振ると大きな壁にぶつかった。
……違う、壁じゃない。
よく見ると、それはぬいぐるみだった。
わたしは、その薄汚れた小さなクマのぬいぐるみの隣にいた。
だれど、そのクマの様子は少しおかしかった。
妙に顔が大きい。
いや、ただ顔が大きいだけじゃない。
全体的に大きく、なぜかわたしの上で横になっていた。
けれど、わたしの上にあるのはそれだけではなかった。
クマの頭を通り越しちょうど真ん中、体で例えるなら腹部辺りに視線を下げていくと“それ”はあった。
全体に無数の黒い糸のようなもので覆われた物体。
黒の下には肌色のようなものも所々見受けられ、そこに開いた沢山の穴から黒い糸が出ているようだった。
それはまるで、頭皮から生えた黒髪に覆われる頭のようで……。
更に視線を下げていくと、糸の切れ目付近から覗き始める真冬のように白い肌に、スッと筋の通った鼻。
そして思わず見とれてしまいそうになる、ぷるっとしたふくよかな唇。
――それは紛れもなく人間だった。
それも超特大の、人間の頭……。
その姿はまるで、膝枕をされているかのような体勢で、規則正しい呼吸が体を上下に動かしていた。
ただそれだけだったら、この話は終わりだ。
けれど、寝ている場所とその人間に問題があった。
だって、その人間は――。
(わたし、だ……。わたしの上で、わたしが寝てる……。なんでっ)
わたしは自らが置かれた状況に、さっきから感じていたこの違和感の答えを見付けることが出来た。
自分の周りにあるものが全て自分より遥かに大きく、そんな“彼ら”の下にわたしがいるからだった。
しかも、わたしの上に自分がいるってことは……。
(そんな、まさか……わたし、枕になっちゃった……!?)
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