◇プロローグ◇

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 わたしはその違和感の原因を知るため、視線を辺りに振ると大きな壁にぶつかった。  ……違う、壁じゃない。  よく見ると、それはぬいぐるみだった。  わたしは、その薄汚れた小さなクマのぬいぐるみの隣にいた。 だれど、そのクマの様子は少しおかしかった。  妙に顔が大きい。 いや、ただ顔が大きいだけじゃない。 全体的に大きく、なぜかわたしの上で横になっていた。  けれど、わたしの上にあるのはそれだけではなかった。    クマの頭を通り越しちょうど真ん中、体で例えるなら腹部辺りに視線を下げていくと“それ”はあった。  全体に無数の黒い糸のようなもので覆われた物体。 黒の下には肌色のようなものも所々見受けられ、そこに開いた沢山の穴から黒い糸が出ているようだった。 それはまるで、頭皮から生えた黒髪に覆われる頭のようで……。  更に視線を下げていくと、糸の切れ目付近から覗き始める真冬のように白い肌に、スッと筋の通った鼻。 そして思わず見とれてしまいそうになる、ぷるっとしたふくよかな唇。 ――それは紛れもなく人間だった。 それも超特大の、人間の頭……。  その姿はまるで、膝枕をされているかのような体勢で、規則正しい呼吸が体を上下に動かしていた。  ただそれだけだったら、この話は終わりだ。 けれど、寝ている場所とその人間に問題があった。 だって、その人間は――。 (わたし、だ……。わたしの上で、わたしが寝てる……。なんでっ)  わたしは自らが置かれた状況に、さっきから感じていたこの違和感の答えを見付けることが出来た。 自分の周りにあるものが全て自分より遥かに大きく、そんな“彼ら”の下にわたしがいるからだった。 しかも、わたしの上に自分がいるってことは……。 (そんな、まさか……わたし、枕になっちゃった……!?)
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