或る夏の日の出来事。

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 弟は朝から友達の家に行って、そのまま学校のプールに出かけるといって出かけたそうだ。帰ってくるのは夕方だとか。  それまで暇なので朝は家で本を読んで過ごし、昼から図書館に向かった。  父親の自転車を借りて、せっせと自転車をこいでいった。  図書館の中は冷房がほどよくきいていた。  ページをめくる音や人が歩く音が静かな空間に響いていた。  何か面白い本はないものかと、本棚をうろついていると、昨日の女の人が本棚に手を伸ばしていた。  精一杯手を伸ばしているが、欲しい本がある本棚には届いていない。  見るに見かねて僕がその本を取ってあげた。  女の人は僕に気づいてはっ、となってぎこちない笑顔を作った。  そのままその日は、彼女の隣で本を読んで、届かないところに本があると、手を伸ばして取ってほしい、とジェスチャーでせがんできた。  図書館で夕方まで本を読んでいたら、日が暮れてしまった。 「今日は、ありがとうございますね」  僕らは歩きながら話していた。  図書館から彼女の今居る家は少し遠いらしく、家まで送っていくことにした。  それに、彼女の手にはたくさんの本があった。とても彼女一人では持ちきれない量だ。  ここの図書館が期限さえ守れば何冊でも貸し出すシステムは、まだ健在だったみたいだ。 「いえいえ。それに、どうやって持って帰る気だったんですか? こんなにたくさんの本」  彼女はくすくすと笑いながら、 「気合いで、持ち帰るつもりでしたよ?」  ……今聞いても、自転車いっぱいに詰め込んだ本は、気合いで持ち帰るには少し距離があったと思う。  女の人はくすくすと笑いながら、 「大丈夫です。私、力は強いんですから」  そうはいっても女の人にこれだけの荷物、持っていくのはかなり酷だろう。せっかくだから手伝ってあげた。  今日は本当に疲れた。そんな夕食はざるそばだった。たくさん出てきたので三杯ほどおかわりした。 ※ 八月二十五日  今日はちょっと衝撃的な事実、といえばいいんだろうか。ゆっくりと思い出しながら書くことにする。  昨日と変わらず暑い。  しかし今日はアパートに帰る日だ。荷造りの準備をする。といっても、そんなに多く荷物を持ってきているわけではなかったので、そこまで準備に手間取ることはなかった。
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