ヒオウギ

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 アマネは村にある家々が鮮明に見えてきた所で立ち止まった。 膝に手をつき、嗚咽交じりの荒い息をつきはじめる。 アマネの全速力はアヒャナにとってランニング程度だったので、ピンピンしている。 アヒャナはアマネに近づくと背中を擦りだした。 「大丈夫か?」 「はぁはぁっだっいはぁじょぶっはっ」 「大丈夫じゃないみたいだな。急がずゆっくり呼吸してみろ。」 アマネは言われた通りにぜえぜえの合間にゆっくりと、呼吸をする。 「そうだ。坊主は物分かりいいな。普通、坊主の歳じゃぁなかなかできないぞ」 アヒャナの言葉を聞くとアマネは照れ臭そうにヘヘッと笑った。 しかし、あるモノが頭に過るとその笑みは一瞬にして消える。 アマネをずっと見ていたアヒャナは、その一瞬を見逃さなかった。 暫くすると、アマネの呼吸は元に戻った。 アマネが膝から手を離すと同時にアヒャナも背中から手を離し、アマネをチラリと見るとすぐ横に座る。 アヒャナが座ったことに気いたアマネも素早く横に座った。 「お兄ちゃんありがとう」 「俺は何もしてないぞ。そんなことより坊主。何であそこに居たら悪いんだ?」 アヒャナは手を後ろにつき体重を掛けると、横にいるアマネの目を見る。 不意に見られたアマネは肩を跳ね上がらせた。 「別に怒ってないから大丈夫だ」 アヒャナは安心させるようにニコリと笑う。 「お爺ちゃんが、お爺ちゃんがね、森には怖い獣がいる言ってたから……」 「そうか、俺が襲われないように助けてくれたのか。ありがとうな、坊主」 そう言うとアヒャナは笑ながらアマネの頭をグリグリと撫でた。 「お兄ちゃんの手冷たくて気持ちい。まるで死にかけの心純(ミリョ)様みたい」 アヒャナは撫でていた手をピタリと止める。 すぐに我に返るとアマネの頭を軽く叩き手を元の位置に戻した。 「そうか。坊主は物分かりが良いだけじゃなく、物知りでもあるんだな」 「うん!! お爺ちゃんがね、いっぱい教えてくれるんだ」 アマネは身を乗り出すと誇らしげに笑った。 「良いお爺ちゃんだな。俺もなにか教えてもらおうかなぁ」 「うん!! じゃあ、お爺ちゃんの所に行く?」 アマネが食いついてくるのを知っていたかのように、 「いいのか? 是非連れて行ってくれ」 と立ち上がった。
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