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「ニーナ」
私が海辺で唄っていると、少し遠くから女性が叫んだ。
ニーナとは、“私”の名前。
私は、笑顔で振り返る。
「お母さんッ」
私はワンピースに付いた砂を払って、お母さんに駆け寄った。
だが、お母さんの所に着き、私は顔を曇らせる。
「駄目だよ、ちゃんと寝てないと。…体に障るから…」
私はお母さんにしがみついた。
…そう。
お母さんは、病にかかっていた。
それも、ただの病ではない。
助かる見込みのない、重い病……。
今、お母さんの痩せ細った体を見た時、
胸の奥から込み上げてくるものがあり、
お母さんにしがみき、泣いた。
目がパンパンに腫れるくらい。
私達は、母一人、子一人。
私はまだ16歳といえど、
お母さんがいなくなってしまうと、どうなるか分かっていた。
お母さんは、私の思いを知ってか、ずっと頭を撫でてくれた。
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