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海辺から帰り、街の門を通って、街へ入る。
私達の家は、街に唯一ある門のちょうど反対側にあり、
大きいとも言えない街を横断していかねばならなかった。
私は、その時間が一番嫌いだった。
何故なら…。
「あの女、ミーナじゃない?ほら、あそこにいる、金髪のセミロングの女」
「本当。早くこの街から去ってくれないかしら。だって、あの女…」
「しっ!!それは禁句よ。言ったら殺されるわ」
…ほらね。
今の会話は、買い物鞄を腕に下げた主婦らしきおばさん二人の会話である。
ミーナ。
それは、お母さんの名前だ。
街では、お母さんを良く思わない人が多く、
いつもこうして、聞こえるような陰口を呟かれる日々だ。
でも、いつも思うのだけれど、
必ず、街の住民が言う言葉。
『禁句』
街の住民が言えない禁句って、何なのだろう。
きっと、お母さんが関係してる。
そのことを尋ねると、お母さんはいつも哀しげに睫毛を伏せる。
私はその場面を見てられなくて、いつも尋ねられない。
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