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『ニーナ。貴女はまだ知らないでいて。時が来たら、いずれ話すわ』
お母さんはそう言って、哀しげに微笑んだ。
私はおばさん達の会話を聞き、横目でお母さんを見上げた。
強い顔…
私はお母さんの顔を見て、そう感じた。
顔はいつものように笑っているのに、
その笑顔の裏に、哀しい気持ちが隠されている。
慣れることなどない、この嫌がらせに、
必死で耐える顔が、そこにはあった。
私は、信じる。
お母さんが、いつかきっと、話してくれる…―――。
街の中心部に入り、陰口は更に酷くなったが、
街の賑わいは変わらなかった。
中心部へ行けば行く程、市場があるためか、賑わいが大きくなる。
大人しい街だったが、この賑わいだけは、どの街も同じであった。
広い道の両端に、屋台が立ち並び、野菜や雑貨を並べている。
まだ午前中だというのに、騒がしい。
私はその騒がしさに、思わず微笑んだ。
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