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「ねぇ、早くしてよ!」
待ちくたびれた私は、自分の控え室を飛び出して彼の控え室のドアを勢い良く開けた。
「あー、春花、もうすぐだからちょっと待ってて」
「普通は新婦の方が準備に時間がかかるんじゃないの?なんで、新郎の叶多さんの方が時間かかってるの?」
鏡越しに見る彼の姿にドキッとしながらも、頬を膨らませた。
「…ごめん、どうしても仕上げなきゃいけない書類があって。春花、控え室に戻っててくれないか?俺の髪をセットしてもらったら迎えに行くから」
よく見れば、鏡の前に座る叶多さんの膝の上にパソコンが置いてある。
鏡に映る潤んだ瞳に負けてしまった。
私は、
「…わかった」
そう一言だけ残して控え室のドアをそっと閉めた。
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