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近くの公園に行くと、ベンチに座った。
公園は、不自然なくらい静かで、人は一人もいなかった。
道中、ずっと意味のない話をし続ける母親は、その勢いを衰えることがない。
ベンチに座っても、一方的に話続ける。
「最近は赤にハマってるの!ほら、この服も赤でしょ?」
「うん」
「ただの赤じゃなくて、この深みのある赤が好きでね…」
「あの、お母さん」
話を遮り、母親を呼ぶと、少し眉を歪めたあと、笑顔を作った。
「話があるの」
「……そう。なに?」
どう見たって、作り笑いな母親に、心を痛める。
決意が揺らがないうちに、膝の上に乗せた両手を、ぎゅっと握った。
「私、お母さんのこと、大好きだったよ。けどね、やっぱり、一人にされたのは辛かったし、悲しかった」
「……」
母親は、私を黙って見つめている。
「だから、なんで私もつれてってくれなかったのか知りたいし、どんな理由でも、謝ってほしい」
「……」
「それだけで私は…」
「はぁー…」
私の声を遮り、母親は盛大なため息を吐いた。
びっくりしてうつむきがちだった顔をあげると、呆れ顔の母親が、顔を歪めて私を見ていた。
「あなた、そんな子に育ったの?」
意味がわからずに固まる私に、母親は容赦なく言葉を繋ぐ。
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