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「そんなつまらない事を言う子になったのね」
私を見つめる目は、これ以上ないくらい冷たかった。
「昔はあんなに従順で可愛かったのに」
また、ため息を吐く。
「あの女の影響でしょ?あの女、いつだってそうなのよ」
あの女とは、叔母さんのことだろうか。
ただ驚いて母親を見つめたまま目が離せない私は、静かに言葉を受け止めた。
「私、両親がいないから、あの女、いつも母親面して私を怒って、正義を振りかざしてくるの」
嫌なものを思い出すような顔に、私は心が痛くなった。
「いっつもいっつも、私が悪いって顔でみてくるのよ?冗談じゃないわ、私は悪くないのに」
今聞いているのは、何なのだろう。
悪口?
「まあ、あの女に預けたらそうなるわよね」
「……」
「残念だわ、麻琴」
私は責められているのだろうか。
母親の、”道具”でいることが出来なかったから。
「あなた、もう要らないわ」
私は、また、捨てられたのだろうか。
「麻琴!」
その声に、私は、振り返った。
少し離れた所に、人がいる。
「らいと…」
認識した瞬間、目からぼろぼろと涙が落ちた。
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