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ザザー ザザー
波の音が聞こえる。あの日の記憶…
僕は夕暮れ時、夕陽の淡い光が彼女を黒くしているのが見えた。
彼女は笑っていた。
「河合恵…」
僕は彼女の名前を呟きながら、目を覚ました。
そこは、天国でも無ければ地獄でも無かった。
優しい明かりを放つ蛍光灯、仰向けの体を少し横にずらし、辺りを見回した。
「ああ、目覚めたかい?ここは自殺未遂の方々に生きる希望を与えてあげる施設だ。私の名は相田 和毅、ともき先生って呼びなさい」
「生きる…希望?」
「そうさ、人生の素晴らしさを教えてあげるよ。この施設には君のような人が200といる。これから君は4階に住むんだ…一年生としてね?」
「一年生?ここは学校なのか?」
相田は急に立ち上がり、僕の手を握って、僕を引きずるようにして部屋から出た。
「そうだよ、人生について学ぶ学校さ、四年制で、ここを卒業したら高校を卒業したのと同じ学歴になるぞ。はっはっは良かったな?」
「いいもんか!僕はすぐに死ぬぞ!また死んでやるからな!」
僕がそう言うと、相田の顔つきが変わり、僕の首を掴んで壁に叩きつけた。
「痛い!何すんだよ!僕を…僕を殺す気か!」
「勝手に死ね!!だれも止めやしないさ、今頃お前の家族も同級生も、自殺にすら失敗したお前をあざ笑ってるだろうよ!悔しかったら死んでみろよ!」
僕の首から手が離れ、僕はずるずると壁から落ちた。
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