1・旅行

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「沖縄なんかどぉ? 美ら海水族館とか行きたくない?」 「夏に沖縄かぁ… どうせなら冬に行った方が有り難くない?」 「そっか… じゃあ、真逆の北海道!」 「いいね、北海道! 食べ物も美味しそうだし!」 こうして二人は、夏休みに北海道へ旅行に行く事にした。 「ただいま。 今度の夏休みに、久美と旅行に行こうと思うんだけど、いいよね?」 未希は家に帰ると、母親に旅行の事を伝えた。 「あら、二人で?」 「うん。 久美の傷心旅行に付き合ってあげるの。」 「傷心旅行? 久美ちゃん、またふられたの?」 母親はそう言って笑った。 久美が男と長続きした事が無いのを知っているのだ。 「傷心っていう程落ち込んでないんだけどね。」 未希もそう言って笑う。 「まぁ、たまには旅行も良いんじゃない。 で、どこに行くの?」 「北海道に行こうと思ってるんだ。」 「え?…北海道?」 未希は、今まで普通に話していた母親が… 北海道に行くと言った時、一瞬顔が曇ったように感じた。 「北海道って…なんかマズい?」 「どうして?」 「北海道って言った時、お母さん…なんか変な顔しなかった?」 「気のせいよ。 涼しいから夏に行くには良い所だと思うわよ。」 未希は、なんとなく釈然としなかったが、それ以上は何も言わず 「うん… お父さん、今日帰り早いかな?」 と、話しを変えた。 「旅費、ねだろうと思ってるんでしょ?」 ニヤニヤしながら母親に言われ 「バレたか?」 未希はそう言って舌を出した。
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