2・飛行機

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「夏休みに、未希が友達と二人で旅行に行くんですって。」 未希の母…黒田洋子は、会社に居る夫へ電話をして、未希の旅行の事を伝えた。 「そうか。 また小遣いせびられるな。 でも…わざわざ会社に電話してくる事でも無いだろ?」 「それが…行き先は北海道なのよ。」 「北海道? そうか…大丈夫だとは思うが…。」 夫は少し考えてから 「俺の方でチケット取ってやるから、飛行機じゃなく電車で行くように言ってくれ。」 そう言って電話を切った。 「さっきお父さんから電話があったから、ついでに旅行の事言っといたわよ。」 洋子は、夕飯の支度をしながら話しを始めた。 「まさかダメとか言わなかったよね?」 支度を手伝いながら聞く未希に 「ダメどころか、旅費出してくれるって言ってたわよ。 ホント未希には甘いわね。」 そう言って微笑んだ。 「やった! 帰って来たらほっぺにキスしてやろ。」 「ただし『飛行機じゃなくて電車で行け』って言ってたわ。」 「え? 電車って…北斗星?」 「そうよ。 それしか無いんじゃない?」 「北斗星って、なかなかチケット取れないし、飛行機より高いんだよ。」 「知ってるわよ。 お父さんが出してくれるんだから、気にしなくてもいいんじゃない?」 「私は良いけど、久美にはキツいよ…たぶん。」 「自分で言った事なんだから、たぶん久美ちゃんの分もお父さんが出すわよ。」 有り難い話しとはいえ… そこまでしてもらうのは、さすがに気が引けた未希は 「どうして電車で行けって言うんだろ?」 しごく当たり前の質問をした。 「未希の事が心配なのよ。」 「心配って… 今時、飛行機墜ちるの心配して電車使えなんて言う人居ないよ。」 呆れた顔で言う未希に、洋子は 「お父さんね、昔飛行機事故で友達が亡くなったから…飛行機嫌いなのよ。」 そう言ってため息をついた。 「そうなんだ?…初めて聞いた。」 急にしんみりとした未希に 「だから、電車で行くのも父親孝行って事よ。」 そう言って洋子は微笑んだ。
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