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その謝罪の意味を柚亜は聞かない。 次の会長の言葉を待った。 「私は、私はな、柚亜」 「うん」 「前にも言ったと思うが、柚亜の前では完璧でありたかった」 俺はその言葉を聞いて相談してくれた時を思い出す。 一つ呼吸を置いて会長は続けた。 いつもいつも『水樹』と寄ってきてくれる柚亜を、『水樹は何でも出来るね』と褒めてくれる柚亜を、『水樹は私の憧れだよ』と笑いかけてくれる柚亜を、幻滅させたくなかった、と。 「中学の頃から、ずっと思っていた。柚亜の中にいる私と、目の前にいる私が全然違うものだったら、どうしようって」 柚亜の表情が曇った、歪んだ、泣きそうになった。 柚亜と会長には、俺の知らない出来事がたくさんある。 何を思い出して、何を感じているのかは俺には分からない。 でも、柚亜はとても辛そうで、それを隠していた会長もまた、同じようだった。 「怖かった。初めて出来た、私の友達なんだ。初めての、親友なんだ、柚亜は」 だから、そう言って、会長は涙を目に貯める。 「周りから浮いていた私に、すっと入って来てくれた柚亜に、嫌われたくなかった・・・・・・!」 柚亜がしゃくりあげる。 初めて聞く親友の本音に、色々、思うことがあるに違いない。
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