嗚呼、さらば平穏……

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品行方正、成績優秀。 外ではこんなありふれた四字熟語を当てはめられている義姉。 それが何故、俺のベッドに寝転がり、尚且つ指を舐めているかといえば、偏(ひとえ)にブラコンだから、としか言えない。 ……さて、そろそろ起きるべきだな。 「柚姉、ひとまず起きれ」 卵のようなすべすべの頬を叩き、起床させようと試みる。 「んー?……ねむねむ♪」 しかし、我が義姉……柚姉は薄目で俺に起こされていることを確認すると、狸寝入りにふけこみやがった。 おい、今日は入学式だぞ。 「…………イタズラすんぞ?」 「えー?召し上がれぇ♪♪」 八分音符が増えた。 八分音符と八分音符が並んだところで、ただ上の旗みたいなところが合体するだけなのだが。 「今日はお赤飯だねぇ」 無視しよう。 手を広げて俺を招き入れようとするおバカさんを尻目に、新しい制服に着替え始める。 着替えについては、姉弟で気にするモノではないだろう。 あぁそうそう、今日から俺が通う高校の名は、県立海神(わだつみ)高校。 名前は、近くに併設されている国立海神大学にあやかってるんだとか……そうでないんだとか。 ネクタイをカッターシャツの立てた襟に巻き付ける。 えっと、どうやるんだっけ? 「良夜ー、わかんないのぉ?」 ベッドから起き上がった柚姉が嬉々として駆け寄り、俺のネクタイに片端に触れる。 「あー、やり方忘れた。  えっと、制服が入ってた箱に確か結び方が……おぐぇッ!?」 「うんうん、ここで柚葉お姉さんの出番なんだね?」 俺の魂が旅立ちかけたけど!? いつの間にやら柚姉はネクタイのもう一端も掴んでいたので、動こうとした俺は自動的に首を絞められた。 ……が、ここで気にしないのが柚姉クオリティー。 「えへへ、こーゆーのやってみたかったんだぁ♪」
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