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「うあーん、明良(あきよし)さんに言いつけてやるぅー!」
「いってらー」
明良(俺の実の父親)を求め、涙を袖で拭いながら走り去っていく柚希さん。
何でも良いが、朝食は出来てるのだろうか?
「出来てるよー」
「心読まないで」
と、今さらこの姉にツッコんだところで意味は無い。
仕方なく席に着き、朝食を摂る。
「「いただきまーす」」
*
「「行ってきまーす」」
「グスッ……行ってら゛っしゃい゛」
朝の身支度を整え、玄関を出る。
柚希さんが泣いているのは、父さんに言いつけようにも出張中でいなかったからなんだと。
まぁ結局、『毎日頑張って良夜のデレ期を待つ作戦に切り替えるわ!』なんて宣言していたが……。
言ったら意味無いだろ。
「ふふ、今日からまた良夜が後輩になるんだねー。
お姉ちゃん嬉しくて発情してきちゃった♪」
「返事に困るからやめて」
せめて『発情』じゃなくて『興奮』にして戴きたい。
「おー、満開だー。見て見て良夜!キレイだよー♪」
歩き始めて数分、海神高校へと続く坂道を満開の桜が彩っていた。
風に乗って新入生の後を追うように舞う春の象徴。
「さてさて、ここで我が義弟の良夜クンに物申したい!」
「……どーぞ…」
いちいちツッコむのもアレなので、半ば嘆息気味に柚姉のやりたいように促す。
「えへへ、じゃあ……」
柚姉ははにかみながら息を吐くと、並んで歩いていた俺の横から前進していった。
春の風にスカートが揺れる。
数歩進むと、柚姉は立ち止まって振り返った。
「ようこそ、我らが海神高校へ!
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