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『進路を変えろ』
今更、親はそんなことを私に言ってきたのだ。
私には一応、夢がある。
将来、薬剤師になりたい。
それは、小さい頃に病気がちだった私にとって、ずっと持ち続けてきた思いだった。
薬剤師になるには、専門学校に行ってもいいが、私は国公立の薬学部の試験を受けることに決め、去年からコツコツと勉強してきた。
薬学部の偏差値は高い。
国公立の大学はなおさらだ。しかも、入学してから最低六年間勉強しなければ薬剤師にはなれない。
高卒で公務員になった父母にとって、こんなにリスクの高い進路をとるのは馬鹿だと思ったのだろう。
わざわざ合格出来るか分からないレベルの高い大学を受験し、六年間も学費や生活費をかけて勉強するのだから。
だからといって、
夏休み、三者面談でも親を説得し、絶対受かってみせると宣言したのに、今更『変えろ』なんて。
理系科目を重点的に勉強してきた私にとって、無茶な話だ。
何より、私の思いをあまりにも無視している。親は何も分かっていない。
私は昼間のことに苛立ちを感じ、そばにあった飴を食べた。
オレンジの爽やかな味が弾け、口の中に広がる。
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