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俺は不良で固まっていたら、聞き覚えの声が俺を呼んだのだ。
『マサくーん』
マサ君なんてひとりしか呼ばない。
俺はぎょっとしならがら声のした方を見ると、何年か見なかった懐かしい人物がいた。
『姉貴!!』
姉貴はにこやかに不良集団の中に入ってきたのだ。
それも2歳くらいの餓鬼を連れて。
『マサト!見て見て~。私の子供!うふふ、ヒロキくん若い叔父さんですよ~?』
『お、…じしゃん?』
じっと俺を見る餓鬼。
普通の餓鬼ならこんなガラの悪い輩ばかりの所で泣くだろう。
なのに、いきなりへにゃりと笑ったのだ。
その場違いの2人に俺の仲間も俺も茫然と立ったままだった。
『子供って、似てねぇじゃん。もしかして、姉貴の男に似てるのかよ』
『ヒロミくんは美形よ!ヒロキだってこんなに可愛いじゃない!!』
ムスッと言う姉貴に俺はポカンとしてしまう。
そして、夫の写真を見せられ餓鬼を何度も見てしまう。
後ろにいた仲間もそうだろう。
『全然似てねぇ!!拾ったのかよ!?』
『失礼な。ちゃんと生みました~。こんな可愛いくてイケメン居ないわよ』
息子自慢をする姉貴にあきれるばかりだ。
姉にぐりぐりやられてキャッキャッと笑っている餓鬼がカッコいいなど可愛いなどって。どっからどう見ても平凡だろ。
『マサ。テンション狂うんだけど』
『…姉貴もう帰……』
『あ、そうそう。一度実家に帰るからこの子預かってて』
『はぁ!?』
『いいでしょ?あんな両親に大切な息子を会わせたくないの!叔父さんなら快く引き受けなさい!じゃね』
何と勝手な姉貴なんだろうと思った。
姉貴は俺に餓鬼を抱かせると見かけによらない速さで姿を消していった。
『……俺にどうしろと』
『ボク、名前なにかな?』
『…カズ。慣れてるのか』
『俺、下に沢山いるからな』
偉そうに言える事ではないと思う……。
この時の俺はまだそこまで姉貴の子供。ヒロキを可愛いと思っていなかった。
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