君が望むなら

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そんな事を思い出している時だった。 『マサト!お前、また90点代かよ!!いつも俺らと喧嘩三昧のくせに!!』 俺の軽い鞄の中の物を物色しその中からたまたまテスト用紙が出てきた。 それの点に叫ぶ仲間。 けど、そんなの俺の家じゃ意味なんだ。 『うるせぇな。こんなのごみなんだよ』 『……?なぁに?』 俺の行動を見ていたヒロキは首を傾げカズ達に聞く。 カズ達はヒロキの頭を撫で簡単に説明をした。 『色々な事を知っていてすごいってことだよ?えらいってこと』 『いいこ、いいこ?』 『そうそう』 きらきらさせた目を俺に向け小さな歩幅で走ってくるヒロキを横目に俺は煙草をくわえる。 無視をしようとして。 ライターを出そうとした瞬間だった。 小さな手が俺の染めて傷んでいる髪を撫でたのだ。 思わず口にあった煙草が落ちた。 『!?』 『いいこ、いいこ!』 そして、回しきれないながらも腕を俺に回し抱きしめるヒロキ。 何故かそれが姉貴にやられた気分だった。 って、息子だからか。 『おにいちゃ、だいしゅき。ママといるみたいであったかい』 えへへと本当に笑顔の絶えない餓鬼だと思った。 それと同時に嬉しかった。 血の繋がった奴に好きと言われた事が。姉以外で聞いたこともなかったし、何より小さな子供のヒロキから温かさが感じられたからだ。 『ひろ、おにいちゃみたいになるぅ』 会ったばかりの俺になるとか馬鹿じゃないのか。 とか、思ってしまってもその無邪気な笑顔に俺は動かされた。 興味のなかった、いつの間にか姉貴がつくった子供なのに今は抱きよせている。 俺は多分唯一の姉貴を取られたと思っていた。 けど、今は姉貴と同じくらいこいつが大切に思えてきたんだ。 その日の夕方、迎えに来た姉貴と帰っていくヒロキの姿に寂しさを覚えた。 写真を最後に撮った時それの感情が出てしまったのは不可抗力と言う物だ。 けど、住所を俺にだけ教えてくれていつでも来ていいと言われヒロキにも『またね~』と手を振られた。  
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