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「アン…!どこに行ってたのっ探したのよ」
村へ戻ると、少女の元へ若い修道女が駆け寄ってきた。彼女は息をきらし青ざめている。
「どうしたのシスター…また、誰か死んだ?」
「アン!!そんな言い方はやめなさい……神父様が…」
村は騒然としていた。
『アン』と呼ばれる少女がこの村へやってきたのは、ちょうど一週間前。
森の入り口で倒れていたところを、あの修道女に拾われたのだ。
この深い森で遭難した可哀想な少女だと、当初は村人皆で世話をやいた。
だが。
その同情は、いつしか恐怖と憎悪へ変化していった。
村人の死。
一人だけではない、この一週間ですでに四人の死者がでている。そして、今日で五人目…
死因は様々で、安易に他殺とは言い切れぬものであるが、今まで平穏に生きてきた村人達にとって、相次ぐ事故など…そうやすやすと認められるものではない。
それも、『アンが来てから』という特定の条件があるのだから尚更だった。
教会を取り囲む村人達は、姿を見せた少女へ、憎悪を込めた視線を向ける。
「……アン、中へ入りなさい…」
修道女は村人の視線から目をそらし、少女の背中をそっと押す。
「…人殺し…」
村人の一人が呟いた。すると
「…魔女!!全部お前がやったんだろう!!」
「そうよっうちの人を返して!!」
「一体何をしたんだっ…!この化け物め!!!!」
最初の一人をきっかけに、次々と罵声が飛び交い、中には石を投げつける者まで現れた。
修道女は必死に少女をかばい、教会の扉を目指す。
だが、一つの石が、
修道女の腕を交わし、少女の額にぶつかった。
たらりと一筋、真っ赤な血が流れる。
少女は…
『…封印は解けた。…邪魔をするなら皆殺しだ…』
村人達へとまっすぐ手を延ばし、はっきりと、そう口にした。
その声は低く、7歳の少女が発したものとは、思えなかった…。
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