少女と修道女

4/7
前へ
/10ページ
次へ
バタン。 しんとした教会の中、静かに扉を閉めた女は疲れきった顔をし、力なくその場に膝をついた。 ふと、ため息をついた彼女の上に小さな影が重なる。 「……アン、来なさい、傷の手当をしましょう」 「…なんて言って宥めたの?あの人達」 「アン…貴方は何かにとり憑かれている…私が悪魔祓いをするわ」 「そう…それで時間をくれたのね。猶予は?一晩?明日の朝には死刑?」 「アンやめなさい!!どうしてそんな冷たい顔をするの」 修道女は苦悶の表情を浮かべ、少女の瞳を見つめた。だが 「私、悪魔と話ができるのよ」 感情のない声で、少女は呟く。 そして、彼女はゆっくりと手をのばし、今度は強く、こう告げた。 「封印は解けた。新たな悪魔が誕生する」 彼女の手はまっすぐ、修道女の腹を指さしていた。 「アン…何を言ってるの…?」 少女の顔には不気味な笑みさえ見える。 「アン…貴方は何者なの」 必然的に、修道女の顔は疑いの色に染まる。疑惑と、恐怖を帯びた瞳で、じっと少女を見つめた。だが、少女はただ不気味に笑うだけで、何も応えようとはしない。 「アン!!」 苛立った修道女は怒鳴るように少女の名を叫び、その小さな肩に激しく掴みかかった。 その時、 突然 目の前が真っ白になった。 音が消え 意識は薄れ、 自分の体温すら感じない。 掴んでいたはずの小さな腕が、 そっと指の間から崩れ落ち 感触を失っていく─…。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加