5人が本棚に入れています
本棚に追加
バタン。
しんとした教会の中、静かに扉を閉めた女は疲れきった顔をし、力なくその場に膝をついた。
ふと、ため息をついた彼女の上に小さな影が重なる。
「……アン、来なさい、傷の手当をしましょう」
「…なんて言って宥めたの?あの人達」
「アン…貴方は何かにとり憑かれている…私が悪魔祓いをするわ」
「そう…それで時間をくれたのね。猶予は?一晩?明日の朝には死刑?」
「アンやめなさい!!どうしてそんな冷たい顔をするの」
修道女は苦悶の表情を浮かべ、少女の瞳を見つめた。だが
「私、悪魔と話ができるのよ」
感情のない声で、少女は呟く。
そして、彼女はゆっくりと手をのばし、今度は強く、こう告げた。
「封印は解けた。新たな悪魔が誕生する」
彼女の手はまっすぐ、修道女の腹を指さしていた。
「アン…何を言ってるの…?」
少女の顔には不気味な笑みさえ見える。
「アン…貴方は何者なの」
必然的に、修道女の顔は疑いの色に染まる。疑惑と、恐怖を帯びた瞳で、じっと少女を見つめた。だが、少女はただ不気味に笑うだけで、何も応えようとはしない。
「アン!!」
苛立った修道女は怒鳴るように少女の名を叫び、その小さな肩に激しく掴みかかった。
その時、
突然
目の前が真っ白になった。
音が消え
意識は薄れ、
自分の体温すら感じない。
掴んでいたはずの小さな腕が、
そっと指の間から崩れ落ち
感触を失っていく─…。
最初のコメントを投稿しよう!