主の帰還

次の瞬間、
暗い森の中に
甲高い女の悲鳴が響き渡った。

「…どうなってるんだ…これは…」

森の最深部に聳え立つ古い大木の麓。

村人達は無残な女の姿を見た。

引き裂かれた腹と、見開かれた光のない瞳…赤く染まり、微かな笑みを浮かべて横わるその亡骸。

そして、

彼女の腹から空へ向かい、何かが大木を這い上がったかのように

赤い、血痕の道が続いていた。

村人達は全てを焼き払った。
彼女の遺体も、その大木も。

そして跡形もなくなったその場所に灰となった女の残骸を集め、その全てを土の中へと葬った。

─最後の生贄は母なる器そのものであり

その魂はいづれ魔女となり

幾千もの悪魔を従え、永遠の時を彷徨い続ける。

そして

腹を突き破って誕生した悪魔の主は

今宵もまたその巨大な翼を広げ、

人の心に喰らい付くだろう─…。