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好きなんじゃない?
――放課後――
今日は寒くて教室に残っている人が結構いた。
私はメイクの指導をしていた。
「マスカラは付けすぎるとダマになるから気をつけて。下まつげはマスカラを縦にすると綺麗にできるわ。」
「世良~。またお客さんみたいよ~。」
「ん?誰だろ。いまいく!」
スタスタ、スタスタ
ガラッとドアをあけると目の前に女の子の……、いや、室戸明の顔があった。
「世~良ちゃん!」
「ひゃあ!」
ドンッ!
「痛ったぁ。もう二回目だよ?!突き飛ばされたの。」
「かっ、関係ない!いきなり目の前に現れるのがわるいんでしょ?」
「え~。俺のせい?!」
「あたりまえ!!」
言い合っていたら美希が来た。
「何じゃれあってんのよ~!?」
「じゃれあってないよ!」
「顔真っ赤~。照れてる?」
美希は私をからかう。
「ち、違っ。気温が高いし、あっ暑い…だけ!」
必死に誤魔化す私。
「外雪ふってるのに?」
「うっ!」
美希のにやけた顔には「どんなもんだい!」と書いてある。
「照れなくてもいいのに…。」
ドンッ!
「痛ったい…。3回目…。」
「うるさい!何どさくさに紛れて抱きつこうとしてんのよ!」
「いいじゃん。別に減るもんじゃないんだよ?」
「用がないなら私、帰る!」
「あ~、待って!これ。」
室戸明はポケットからカラーリップを取り出した。
「下駄箱の上に落ちてた。」
パシッとカラーリップを取ると、
「室戸さんご苦労様。ありがと。じゃ!」
「あっ!……行っちゃった。」
「あのっ!室戸さん…でしたっけ?世良ちゃんとはいつから…。」
理央が遠慮ぎみにきく。
「俺は知ってたんだけど、初めて話したのは昨日だよ。」
「えぇ!世良ちゃんとは昨日あったばかりなんですか?!普通に半径1メートル以内に入ってたから従兄弟か何かなのかと…。」
「あっ、そういえば1メートルどころか距離30センチぐらいだったよな。」
私はそのとき、息切れしながら
「あーもぅ!あの人といると私の心臓持たないし調子狂う!」
一人で叫んでいた。
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