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ももって、私の名前…?
こちらまで苦しくなるような声色で彼は私の名前を何度も呼ぶ。
何故だか分からないけれど私まで泣きそうになった。
そんな時。
彼が勢いよく顔を上げた。
えっ!!
起こしちゃったのかなと焦りまくっている私。
だけれど彼は、目を開けることはなくて。
起きてはいないの…?
寝ぼけてるのかな。もしかして。
彼の顔をジッと見つめていると、彼の瞳から一粒綺麗な透明の雫が零れ落ちた。
それは涙以外の何ものでもなくて。
どうして泣いているのかと心配するのが普通なんだろうけど、その光景に目を奪われている私がいた。
顔を上げた彼のスッとした綺麗な鼻や長い睫毛に、私は益々魅了させられてしまう。
彼は綺麗という言葉がよく似合う人だ。
まるでこの光景が映画のワンシーンではないかと錯覚してしまう程の。
まだ握られている手首への力はだんだんと弱まり、もう私が手を動かしたら離れてしまうぐらいの力である。
でも、彼の手を離したくない思う。
記憶喪失だというのにどうしてこんなにも彼に惹かれるのだろう。
分からない。分からないよ。
「もも…っ。起きてよ。いつまで眠ってるつもりなの。…ねえ、返事して」
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