目覚めたら。

3/5
前へ
/7ページ
次へ
ももって、私の名前…? こちらまで苦しくなるような声色で彼は私の名前を何度も呼ぶ。 何故だか分からないけれど私まで泣きそうになった。 そんな時。 彼が勢いよく顔を上げた。 えっ!! 起こしちゃったのかなと焦りまくっている私。 だけれど彼は、目を開けることはなくて。 起きてはいないの…? 寝ぼけてるのかな。もしかして。 彼の顔をジッと見つめていると、彼の瞳から一粒綺麗な透明の雫が零れ落ちた。 それは涙以外の何ものでもなくて。 どうして泣いているのかと心配するのが普通なんだろうけど、その光景に目を奪われている私がいた。 顔を上げた彼のスッとした綺麗な鼻や長い睫毛に、私は益々魅了させられてしまう。 彼は綺麗という言葉がよく似合う人だ。 まるでこの光景が映画のワンシーンではないかと錯覚してしまう程の。 まだ握られている手首への力はだんだんと弱まり、もう私が手を動かしたら離れてしまうぐらいの力である。 でも、彼の手を離したくない思う。 記憶喪失だというのにどうしてこんなにも彼に惹かれるのだろう。 分からない。分からないよ。 「もも…っ。起きてよ。いつまで眠ってるつもりなの。…ねえ、返事して」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加