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アカトカから離れて一週間が経つ。
ゼトやアレンと別れたグレイ達は次の村を目指し、森の中を速足で歩んでいた。
「何かに見られてますわね」
光りさえも届かぬうっそうとした森の中を訝しげに見つめながら、ユウナがそう呟いた。
それに頷くグレイとロイは自らの武器に触れながら、ただ、先を急いでいる。
此処は死の森。多くの旅人が死を迎える魔の森と呼ばれ、恐れられていた。そのせいか、あちこちに人骨らしきものが転がり、しかも最近のものなかのか、胸を何かに抉られた死体が朽ち果てかける木にもたれている。
それを悲しげな瞳で見つめたエレナは瞳を閉じ先をいく。彼らに止まっている時間はなかった。
それは世界が終わりへと向かって突き進んでいるのを肌で感じたからだ。
森と呼ばれた其処は緑などなく、あるのは未だ聳えたつ枯れ木と、それに群がる何かの黒色の粘りけのある物体。それが殆ど光さえ通さない森へと化している原因だった。
まして、その光景は……この世界の至る所で目撃されており、そこで生きる動植物をあっという間に朽ち果てさせ、荒野へと変えていく。
何かに支配された、その森も……いつかは荒野へと変わる前兆だった。
そんな中、グレイ達は森の中に広がる荒野へと出た。
「あれは……?」
ふと、エレナが荒野の中心を見つめ呟く。そこには……今や居るはずのない生物が横たわっていた。
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