29. 咆 哮

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* 九月最終の土曜日。 シャインズは、大阪・広島への遠征の後、昨日金沢に戻ってきた。 昼間、金国大の秋季リーグの応援に行った藍生は、試合が終わってすぐ金スタに向かった。 ナイターの今日。試合開始までまだ時間はあるが、藍生は早めに球場入りし、ブルペンへ足を向けた。 一塁側のブルペンでは、シャインズの投手陣が投球練習をしている。 バンバンバンとミットを叩く音が連続で響く。 「よーし、いいぞ! いい球だ!」 キャッチャーからの返球を受けて、今日先発の左のエース・掛川桜良は小さく頷いた。 開幕から唯一ローテを守っている掛川。 現在リーグ4位のシャインズは、CS進出は怪しくなっていたが、掛川だけはひとりで17勝を上げ、最多勝候補に挙がっている。 「……」 小窓から、掛川をじっと見つめる藍生。 牧原の話を思い返していた。 * 『やる気を取り戻させたいんなら』 『脇田か、掛川か……』 『一球、投げてもらったらいいんじゃないか』 『本物のプロの球を』
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