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「ちぃちゃんちぃちゃん」
「なんだい、しぃちゃん」
「実はね、サンタの正体は僕だったんだ」
言って。僕はちぃちゃんの方を振り向かず、彼女の手にそれを握らせた。手作りの小さなぬいぐるみ。失敗だらけでちぐはぐで不恰好で、まるで僕のような、この日の為に用意していたちぃちゃんへのプレゼントだった。
ぎゅっ、と。
握らせたプレゼントごと、ちぃちゃんが僕の手を握ってくる。
「そっかー……サンタはしぃちゃんだったのか。それじゃあ、倒せないなあ……」
「僕は倒せないの?」
「しぃちゃんは強敵だからねー。わたしにとっては」
「そっか、強敵か」
「うん、強敵」
「それは適わないね」
「そう、叶わない」
「あははははは」
「ふははははは」
今、僕は笑っていたのだろうか。それは僕にも分からなかったけれど。何だかとても暖かい気がした。星が瞬く。流れ星は流れない。冬の雪のような沈黙が流れて、ちぃちゃんは、言った。
「しぃちゃん、そっち行ってもいい?」
「うん、いいよ」
「何だかねー、眠いんだ……」
「うん、僕も」
「そっかー、しぃちゃんも眠いのかー……」
「でも僕は、ちぃちゃんが眠るまで起きてるよ」
「…………うん。ありがとう」
「おやすみ、ちぃちゃん」
「おやすみ、しぃちゃん」
しばらくして。
聞こえてくる、小さな寝息。凍るように静かで。星のように価値がある。大切な、全て。ああ――そうか。今更になって分かる。僕は。僕にとって、ちぃちゃんは――。
隣でちぃちゃんがだんだんと冷たくなっていくのを感じながら、僕は目を閉じる。
本当は全然眠くは無かったけれど。
それでも眠りたかったから。
さよなら、クリスマス。
ばいばい、ちぃちゃん。
また明日、しぃちゃん。
いつまでも、一緒に。
どこまでも、一緒に。
そして僕達は、二人並んで眠りに落ちた。
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