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五月蝿いほどのセミの声が響き渡る。
季節は夏。
暑苦しい程の太陽の熱、光。
ある児童養護施設に
朝霧詠夢と言う女の子がいた。
無邪気で人を自然と惹き付けるその魅力に施設の雰囲気は和やかだった。
詠「せんせぇ~お外に行ってもいい?」
詠夢は持ち前の笑顔で施設の先生にねだる。
その笑顔に先生はふわりと微笑み返し許可を出した。
先「いいわよ。でも、遅くならないようにね?」
詠「はーい!じゃあ行ってきます!」
先生に許可が貰えた詠夢は、にこにことして鼻歌を歌いながら施設を飛び出すように出ていった。
普通なら四歳の子どもに許可は、出さないのだが、詠夢は特別成長が速いせいか、言葉もしっかりと話せるし、頭も冴えていた。
その為か、施設の皆からはよく頼られる事があった。
まぁ、そういう事で許可を貰えた詠夢はご機嫌な様子・・・。
一人で道を歩いていると何処からか、
「…たす…けて…」
と言う声が聞こえてきた。
その声は詠夢の耳にも届いたようで…
詠「だぁれ?」
と呟き、声のする方に近づいていった。
そして詠夢が辿り着いたのは小さな神社だった。
もうそれこそ見つけられたのが不思議なくらいの小さな神社。
詠夢は神社を見つけると、そこからあの声がまた聞こえたような気がして、神社の中に入っていった。
入り口には赤い鳥居が何本も並んでいた。
詠「だれかいるのぉ~?」
見たところ誰もいないが、詠夢は呼び掛ける。
し~ん……
もちろん誰もいないので、何の返事もない。
そしたら詠夢は静かな神社の周りを回り始めた。
小さな歩幅で裏に回ると、詠夢は何かを見つけた。
詠「むむぅ」
唸りだした(笑)
警戒しながらもその何かに近づく詠夢。
すると…それはいきなり光を発し、詠夢を呑み込んだ。
あまりの明るさに詠夢は意識をなくしていた。
その何かとは実は時空の歪みだったのだ。
詠夢を呑み込んだ後、時空の歪みは何にもなかったかのように忽然と姿を消した。
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