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廣幸の悲鳴は、四人の所にも、十分すぎるほど届いていた。
「今のは廣幸くんの悲鳴だよね?」
空人が言った。
「うん、まちがいないと思う」
一樹が少し不安そうな表情で言う。
「な、何があったんだろう」
さっきまではしゃいでいた誉はその表情を一気に青ざめさせて言う。
「と、とにかく行ってみよう」
クリオはそう言うと、湯船を飛び出す。
それに続いて空人が飛び出し、そのあとに誉と一樹が続く。
そして、クリオを先頭として四人で廣幸の所へと走った。
ようやく廣幸のところにたどり着いたクリオは、力なく座り込む廣幸の姿を見つけ、「どうしたんだ!?」と声をかけた。
しかし、廣幸はアワアワとわけの言葉にならない声を発するだけで、何も答えず、何かを指さすだけだ。
「まったく、何なんだよ」
クリオはそう呟いて、廣幸の指さす方に視線を向けた。
その瞬間、クリオは「うわっ」と声を上げる。
それとほとんど同時に、「うわぁぁぁぁぁぁ!!」という誉の叫び声と、「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」という一樹の悲鳴が背後から聞こえてくる。
空人が見ると、誉と一樹が裸のまま抱き合って震えている。
空人は再び視線を廣幸の指さす方向に向けた。
そこには、中肉中背の男性が一人横たわっている。
男はまったく動く様子もなく、ただ横たわっているだけだ。
空人は腰を抜かす廣幸の横を通り、男に近寄ると、口元に耳を当てて呼吸の確認を行い、それから首のあたりに触れて脈があるかどうかを確認した。
そこに横たわる男は呼吸もしていなかったし、脈もなかった。
「死んでいる」
空人が呟いた。
その言葉に、誉と一樹がさらに「ひぃぃぃぃぃぃ」と悲鳴を上げ、強く抱き合う。
廣幸は地べたに座り込んだまま、後ずさりして、男から距離をとってゆく。
クリオは絶句して、ただ茫然とした状態で立ち尽くしている。
いきなり目の前に男の死体が現れたのだ。
それも無理はないだろう。
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