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「と、とにかく誰か呼んでこなくちゃ!! 警察にも連絡してもらわなければ!!」
ようやく我に返ったクリオが空人に向かって言う。
しかし、空人は動じる様子もなく、冷静な目でクリオを見た。
「まあ、まってくれよ、クリオくん。これはもしかしたら殺人事件かもしれない。こんな機会はめったにないんだ。どうせなら、ボクたちで解決してみないかい?」
空人の言葉に、クリオは「ええっっっ!! 冗談だろっっっ!!」と叫ぶ。
だけど、空人は至極真面目な表情で、首を横に振る。
「冗談ではないんだよ、クリオくん。見てごらん、そこに割れた徳利が転がっているだろう?」
空人はそう言って、男の傍を指さした。
たしかにそこには割れた二合徳利が転がっている。
「この男はおそらく、あの徳利で殴られて殺されたんだ。それにね……」
「それに、何ですか?」
相変わらず誉と抱き合ったままの状態で、一樹が尋ねる。
「少し気になることがあるんだ」
空人はそう言うと、右手を顎のあたりに当てて考えるそぶりを見せる。
「気になること?」
今度はクリオが尋ねた。
「うん。まずは、廣幸くんに訊いてみたいんだけど、君がここにやってきたときには、この男の死体はここにあったのかい?」
「ありませんでした」
ようやく立ち上がったばかりの廣幸が答える。
「そうか、君がここに来たときにはこの死体はなかった。つまり、君がここに来てから、僕たちがここに駆けつけるまでの間にこの男は殺されたことになる」
空人はフムフムと頷く。
「それが何だっていうのさ」
クリオが言う。
すると、空人はニヤリと笑って、少し間をおいてから口を開いた。
「いいかい、ボクたち四人、つまりボクとクリオくん、そして誉くんと一樹くんはずっと一緒にいたんだ。要するに、アリバイがあるんだよ。互いに互いがアリバイを証明できる。アリバイがないのは廣幸くんだけだ。見る限り、いま、この風呂の中にボクたち以外に客はいない。だとすれば、犯人はおのずと見えてくると思うが」
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