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「ちょ、ちょっと待ってください。俺が殺したといいたいんですか!?」
廣幸がすぐさま反応する。
「まあ、状況的にはそういうことになるだろうね」
空人はじっと廣幸を睨みつける。
「ほ、本当に廣幸が殺したの?」
一樹が不安そうな表情で尋ねると、誉も「そんなことありえないよね~?」とフォローする。
だが、空人はその追及の手を休めない。
「いいかい、入口からこの場所に来るには、必ずボクたちがいた場所を通らなければならない。だけど、ボクたちはこの男が入ってきたのを見ていないんだ。おっと、はしゃいでいて見ていないわけじゃないよ。本当に誰も入ってきていないんだ」
「どういうことだ?」
クリオが尋ねる。
「要するに、この男はボクたちよりも先にこの温泉に入っていたということさ。ボクとクリオくんは、誉くんたちが入ってくるよりも先にこの温泉に入っていたけれど、入口に近い方、つまり、今しがたまでボクたちがいたあたりに入っていた。だけど、湯けむりで奥の方までは見えていなかった。つまり、ボクとクリオくんが気づいていなかっただけで、この男はもともとこの温泉に入っていたんだよ」
「そういうことか」
クリオは頷く。
しかし、すぐに新たな可能性がクリオの頭の中をよぎった。
「ちょっと待て。だとしたら、廣幸がこの場所に来る前にすでに殺されていたということも考えられるんじゃないか?」
だが、そんなクリオの言葉に、空人は冷静に答える。
「いいかい、それはあり得ないんだよ。さっき、僕は廣幸くんに『ここに来たときに死体があったかい?』って訊いたよね? その時に廣幸くんは何て答えたかな? 『ありませんでした』と答えなかったかな?」
「たしかに」
クリオが頷く。
「ちょっと待ってください!!」
空人とクリオのやり取りに、突然廣幸が割り込んだ。
「たしかに、僕が来たときにはその死体はありませんでしたが、僕は殺したりなんかしていません!!」
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