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「だったら、突然死体が空から降ってきたとでもいうのかい? それこそナンセンスだろう?」
空人が厳しい目で廣幸を見ながら言う。
だが、廣幸も負けじと反論する。
「死体が突然ここに現れた理由ならば、いくらでも説明することはできますよ!!」
「どういうこと~?」
誉がすぐに質問する。
「いいですか。まず、俺がここに来たとき、この死体はなかった。あれば気づいていたはずだし。それで俺は、近くにあった桶で体にお湯をかけて湯船に入った。おそらく、俺の使った桶はその男が使っていた桶なんだろう。そもそも、こんなところに桶が一つだけ転がっているなんておかしいからね。だから、その男が俺たちよりも先に風呂に入っていたというのは間違いないだろう」
「ふむ、それで?」
空人が話を促す。
「だけど、その男は、俺がここに来る前に殺されていた」
「それだと矛盾するだろう? さっき、自分で、『死体があれば気づいたはずだ』と言ったばかりじゃないか?」
今度はクリオが追及の手を入れる。
しかし、廣幸は動じない。
「簡単な話ですよ。死体は隠されていたんです」
「隠されていた? どこに?」
今度は一樹が尋ねる。
一樹は廣幸を疑っているのか、その眼は懐疑に満ちている。
だが、相変わらず廣幸は動じない。
「簡単な話だよ。周りを見てみろよ。何がある? 雪だよ。要するに、この男の死体は雪をかけられて隠されていたんだ!!」
「あ、そっか~!! 雪で隠されていたんなら見えるはずがないよね~。本当に廣幸が殺したのかと思って、ちょっと慌てたよ~」
誉がホッと胸を撫で下ろすような仕草を見せながら言った。
だが、それと裏腹に、空人の眼光はさらに鋭く廣幸を見据える。
「廣幸くん、君の話は確かに筋が通っているように思えるよ。だけどね、君の話を貫くとすると、さらなる疑問が湧き上がってくるんだよ」
「何だ?」
クリオが空人に尋ねる。
「簡単なことさ。どうやって雪の下からこの死体が現れたのかということさ」
空人は答えた。
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