イケメン湯けむり殺人事件

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「えっと、人工呼吸ってどうやるんだったっけっっ??」 クリオは慌てふためきながら、以前学校で習った心肺蘇生法の記憶を必死に辿る。 「たしか、まず気道を確保するんだったよな??」 クリオはそう呟くと、右手で空との首の後ろ側に手を入れ、軽く後頭部を支えて軌道を確保する。 「えっと、それから、空気が漏れないように手で鼻を摘んで、口全体を覆うように口を付けて息を吹き込むんだったよな??」 クリオは微かな記憶を頼りに、空人の鼻を左手の人差し指と親指でしっかりと挟み込んだ。 そして、クリオは自分の唇をゆっくりと空人の唇へと近づけていく。 妙にドキドキとした胸の高鳴りがクリオを襲う。 いつもニコニコと笑っている空人だが、静かに目を閉じていると、その顔立ちがいかに端正なものであるかが如実に表れる。 クリオにはその胸の高鳴りの理由はよくわからなかったが、とにかく今はどんなに胸が高鳴ろうとも、空人を助けなければならないという思いでいっぱいだった。 そしてクリオの唇がまさに空人の唇に到達しようとしたその時、突然、空人がパチリと目を開けた。 「クリオくん、痛いし苦しいんだけど……」 鼻を摘まれているため、風邪をひいたときの鼻声のような声で空人が言った。 何が起こったのか全く理解のできていないクリオは、慌てて空人の鼻を摘んでいた手を離すと、後頭部を支えていた手も離し、空人から離れた。 そんなクリオの様子を見て、空人は何事も無かったかのように、「クリオくん、どうしたの?」と微笑みかける。 それで全てを理解したクリオは、その青い瞳で空人を睨み付けながら、「もしかして、からかった?」と尋ねる。 「うん、ごめんね」 空人はそう言うと、屈託のない笑みを浮かべる。 そこには、ぐったりとして力ない先程までの空人の姿は全くと言っていいほど存在せず、代わりに、いつもと変わることのない空人の姿があった。image=437218352.jpg
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