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「ちょっっ!! マジで笑いごとじゃないって!! マジで焦ったじゃん!!」
クリオがきつめの口調で言った。
「ごめんごめん。ちょっとした冗談だよ。クリオくん、そんなに怒らないでよ」
「まあ、空人が人をからかうのはいつものことだけど、今回のはマジで心臓によくないって!!」
「だからごめんって誤ってるでしょ」
「危うく空人にキスしちゃうところだったじゃん!!」
「あはは」
空人が笑ったその時、突然入口の方から人の声が聞こえてきた。
クリオと空人が入口の方に視線を向けると、高校生くらいの男の子が三人並んで露天風呂に入ってきたところだった。
左は空人とそれほど背丈の変わらない、眼鏡をかけたクールそうな男の子、真ん中は華奢な印象を受ける、明るい印象の男の子、右は身長150センチくらいで小柄な、一見女の子のようにも見える男の子という順番で並び、クリオと空人の方に向かって歩いてくる。
「あ、廣幸、見て!! 先に入っている人がいるよ~」
真ん中の男の子が左に並ぶ男の子に向かって言った。
しかし、話しかけられた男の子は、フンといった感じで真ん中の男の子を一瞥するだけで何も答えない。
真ん中の男の子はそれでも懲りずに、今度は左側の男の子に話しかける。
「ねえねえ、一樹。ほら、見てよ。人がいるよ!!」
「うん、見たらわかるよ」
一樹と呼ばれた男の子は仕方がないなといった感じで答える。
それに続けるようにして、左にいる廣幸が、「誉、少し静かにしろよ。他の人に迷惑がかかるだろう」と真ん中の男の子をたしなめる。
誉と呼ばれた男の子は、少しシュンと落ち込んだような表情を浮かべると、「廣幸、ごめん。気をつけるよ」と言った。
しかし、誉の顔にはすぐに元の明るそうな表情が浮かんだ。
そんなやり取りをしながら、三人はようやく湯船の脇までたどり着いた。
クリオと空人はその様子を、ただ黙って見ていた。
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