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誉、廣幸、一樹の三人は、空人とクリオから少し距離をおいて、ほとんど三人同時に湯船に体を浸けた。
誉はよほど上機嫌なのか、タオルを頭の上に乗せて、楽しそうに鼻歌を歌っているが、両隣にいる二人に声をかけようとはしない。
おそらく、話しかけても先程と同じような反応が返ってくるだけだろうということがわかっているのだろう。
しばらく鼻歌を歌った後、突然、誉がクリオと空人の方を向いて、「こんにちは~」と声をかけた。
「こんにちは」と笑顔で空人が返す。
すると、誉は、反応してもらえたことが嬉しかったのか、尋ねられもしないのに、「俺、月見里誉っていいます。17歳の高校生です」と勝手に自己紹介を始める。
「誉くんだね。ボクは濱口空人といいます。そしてこっちが黒崎クリオ」
空人は親指でクリオを指しながら言った。
それに合わせてクリオが「どうも」と軽く頭を下げる。
「よろしくお願いしま~す」
誉はそう言って手を振ってから、「こっちは長瀬廣幸」と左の男の子を指して言い、「そしてこっちが宮野一樹」と右の男の子を指して言った。
勝手に紹介された廣幸と一樹は、仕方がないなといった表情を浮かべ、クリオと空人の方に向かって軽く頭を下げた。
「もしよかったら、僕たちもそっちに行ってもいいかな?」
空人が誉に向かって言った。
すると誉は嬉しそうな表情を浮かべて、「どうぞどうぞ」と空人に向かって手招きをする。
空人が隣を見ると、クリオは少し面倒くさそうな表情を浮かべて空人を見ていた。
それでも、クリオは決して拒否しない。
そして、空人が右目を軽く瞑って合図をすると、クリオは諦めたように小さくため息を吐いた。
空人はにっこりと微笑んでから、誉たち三人の方に向かってお湯の中をザブザブと歩き出す。
そして、クリオは前を行く空人の背中を眺めるようにしながら、そのあとに付いてゆく。
そして、三人の所にたどり着いたクリオと空人は彼らと向かい合うように座った。
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