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「ったく、しゃあーねぇな…」
頭をかきながらボールを地面に置き、足のつま先でボールをすくいあげて膝でリフティングをする。
無駄がなくボールを落とさない俺に子供達は無邪気な目をして拍手をしていた。
「どうやったらそんな上手くなれるの!?」
「……練習…かな?」
少し間があいた。
練習のおかげもあるが半分以上はこの異常なまでの運動神経のよさだろう。
誰もが俺にサッカーの才能があると言う。
サッカーの才能じゃなくて運動神経が良すぎるだけだ。
でも、いくら運動神経がよくても練習なしではサッカーができない。
皆に特別と言われ、息苦しい時もあったがボールを追いかけているとそんな事を忘れる。
だから、俺はサッカーが好きなんだ。
「キーパーが泣いてどうするんだよ!キーパーやめろよ!」
「だって、ボールが…」
試合形式で遊んでいるとボールがキーパーの男の子の顔に当たった。
キーパーは体を張るもの。これぐらいで泣いていたらキーパーの世界は厳しい。
「ほら、泣き止め。」
ポケットからティッシュを出して、鼻血が出る男の子の鼻を拭く。
「うぅ…痛いよぉ…」
「よく考えてみろ。
おまえは顔面でボールを阻止した。
おまえのチームは一点入れてて、おまえが阻止したから同点にならずにすんだんだぞ」
少し落ち着いたのか、涙を拭きながら俺の話しを聞いてくれる。
まだ痛いのか鼻は真っ赤だ。
「その一点、サッカーでは大事だ!おまえはチームの守護神だ!!」
「しゅごしん?」
「あ~…皆のヒーローだ!!」
守護神って言う言葉が難しいのかヒーローと言う言葉に言い換えると男の子は嬉しそうに笑う。
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