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だから俺は言った。
『花夜を傷つけないで!!』
母さんは俺の顔色を伺うように、傷ついた花夜に見向きもしないで俺のご機嫌をとる。
そんなに俺が大事なのか。自分の本当の娘より俺が大事なのか。
…俺は母さんが嫌いだ。
だがら、反抗してやった。何をするにしても反抗してやった。
俺が嫌いになるように。
でも、逆に俺が言う事を聞かなければ花夜の傷は酷くなった。
だから俺はいい子になった。
そしたら花夜の怪我は少なくなった。
俺は花夜のために母さんの言う事を聞く。
そしたら花夜を守れると思った。
「お腹空いたねー」
隣で伸びをする花夜。
最近気付いた。
母さんが花夜を傷つけるのはストレスだ。
昔はわからなかったが、父さんは浮気している。
証拠はない。でも、なんとなくだがわかる。
その怒りの矛先が花夜に向いているんだ。
「今日のご飯なにかな?魚料理は嫌だな…。
あ、でもお兄ちゃんが魚好きだから今日はそれかな…」
嫌そうに一人で喋る花夜。俺は花夜の手を握る。
「花夜…、お前本当にいいのか?」
「え、そりゃ魚は嫌だけど…」
「違う!お前、また最近殴られてるだろ!
やっぱり、俺と一緒にいたほうが…」
手で俺が喋るのを制す。
「私、中1だよ?
一緒に寝るのは低学年まで。キモいじゃん」
「でも…」
花夜が俺の手を握りしめて、額を合わせる。
「大丈夫。ありがとう。私、お兄ちゃんがお兄ちゃんでよかったよ。
ずっと一人で耐えてたし、お兄ちゃんが隣で寝てくれた時は泣くぐらいに嬉しかった。
私、お兄ちゃんに守られてるから昔よりだいぶんましだよ」
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