全てがX(未知数)

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ーベアトリア西区ヤハウェの森ー 目を開けるとそこに広がったのは一面の花畑でも無ければ白一色の世界でも無い。薄暗い中に木漏れ日が指す緑の多い森であった。 「あれ……なんでこんな所に?」 大の字で仰向けだったため、上半身だけ起こして辺りを確認する。 木漏れ日が指しているところから、まだ時間的には安心できるだろう。問題なのは出口である。 何処から入ったのか、なんの目的で入ったのかも分からない。そうとなればここから抜け出すのは困難である。 「畜生、ここ何処なんだよ!」 無意味に叫んでみたものの、その声に反応してくれるような心優しい人達はお出ででない。 だが、森の中で叫ぶというのは非常に危険な行為だとご存知だろうか? 獰猛な熊や猪などはその音に反応してこちらに向かってくるのだ。 そして、その事に気がついても時既に遅し。後ろから腐葉土を力強く蹴りつける音が耳に届く。 ヤバイ、逃げなきゃ…… そう頭で理解していたとしても、その音がどの方角から来ているのかが掴めない以上、迂闊に動く事は出来ない。 「どっちだ……全方角から今俺の真っ正面から来るのは1/360……いやまてよ? 分母の値は自然数の値でしか無い……つまり無限小の値を考えれば……む、無限大!?」 数学男子の性なのか、こんな状況でも何故か数学の確率で計算してしまう。それにそこまで細かくしなくても良いのに。 その時だった。小枝を踏みつけた乾いた音が聞こえた。方角は右側だ。 となればここは真逆の左へ逃げるべき、いやいや猪なら直線に来るからこのまま正面にダッシュをかけるべきか。 そうと決まれば作戦実行である。 俺は自らの身体能力を信じで力強く初めの一歩を踏み出した。 ☆★☆★ 本誌とは関係ないです。 ページコメントに書かれていたのですが 「分母がふえたら値は0に近づく」 とありますが 分数で表したのは「何かがくる方角といま向いている向きが一致する可能性」です。 無限大と称したのは「向くべき方角、つまり選択肢」です。 分かりにくくて申し訳ありませんでした。
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