18人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
「ふぅ……」
ライフルを持った男は、商業ビルから出てきた。周囲を確かめる。付近に生き物は居ない。それを確認すると、歩き出した。
「ここにも、人は居ないか……」
自分の居た避難所が襲撃されてから、生きている人を一人たりとも見ていない。
彼はスクランブル交差点を横断する。電気が通っていないため、信号は沈黙したままだ。
ライフルの残弾を確認する。数発で弾倉が空になることがわかった。
*
渋谷駅。機能していない改札を通り過ぎる。駅にも人の姿は無い。無人の売店前に立つ。棚から携帯食料を取る。封を開け、食べた。水は背負っていたリュックから取り出して飲んだ。
「さて、どこに行くかね……」
男は地図を取り出し、渋谷にバツ印をつける。そして、まだ行っていない場所を探す。しばし悩んだ末、東へと歩き出した。
誰もいない都市を、黙々と……。
しばらく歩いたところでラジオの電源をつける。しかし、放送局に周波数を合わせたところで、ノイズしか鳴らない。
「こいつもダメか……」
男はラジオをリュックにしまう。
遠くに、彼が何匹と殺してきた生物を見つけた。
最初のコメントを投稿しよう!