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男はゆっくりと歩いていく。十字路などは、十分安全確認をしてから早足で通り抜ける。何が潜んでいるかわからないからだ。
ある民家の前を通ろうとした時だった。急に民家の扉が開いた。とっさにライフルを構える。同時に銃口が男に向けられた。ぽつりと呟く。
「人……だ……」
襲撃された避難所から逃げて、はじめて見た人。食パンを口にくわえ、右手にライフルを持つ、腰まで届く銀髪に、赤い目……。スレンダーなボディにちょっと残念な……、
「ぺちゃぱい……」
……銃身で殴られた。
「~~ッ!!」
なんとか叫ぶのを我慢し、女を見る。外見は自分より年下だ。グレーのタンクトップに、ギリギリまで短く切られたかなり短いジーンズ。
「ぺちゃぱい言ったのは悪かった! 君、誰?」
女は蔑むような視線で男を見る。
「……お前こそ誰だ。奴らの戦闘データでもとっているのか?」
「奴ら……?」
「とぼけるな! ただの偶然でここに人が居るとは考えられない。何が目的だ」
男は、女の言葉の意味が理解できないが、とりあえず答える。
「俺の居た避難所が犬みたいなのに襲撃されちまってさ、人が居る避難所を探してるんだ」
「……」
「あ、俺は神谷直樹。どこがどんな状況か教えてくれると助かる。あと、ここがどこかも……」
直樹はリュックからペンと地図を取り出す。女は呆れたように彼を見た。
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