一日目

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「え……?」 女は角を曲がる直前に直樹の後ろを指差す。直樹は振り返った。フントが迫ってきていた。 「クソッ! 自分だけ逃げやがって!!」 直樹はライフルを構えると、撃つ。フルオートで弾丸が撃ち出され、フントを撃ち抜く。同時に弾切れ。フントは直樹の手前で息絶えた。直樹は警戒しながらその場を離れ、弾倉を交換した。 「俺が何したって言うんだよ……」 直樹は呟いて、一つの可能性に行き着いた。ぺちゃぱい。彼女は胸が無いことを余程気にしていたのだろう。次会ったら本気で謝らなければ……。そう心に誓った。 * とは誓ったものの、彼女どころか学生とやらも見つからない。 「まっさか、あれが俺の人生最後の会話とか言わないよな? 流石にお断りだぞ、それは……」 ぼそぼそと呟く。夏とは嫌なものだ。すぐに喉が渇く。直樹は水を飲みながら歩いた。 本当なら誰か居ないか大声を出しながら歩きたいが、そうもいかない。フントに見つかりたくない。 左手に持った地図と現在位置を見合わせる。が、よくわからない。とりあえず東に歩いていくことにした。 * 「何なの……アイツ……」 女は先ほどのことを思い返す。 勝手にベラベラと喋る男は避難所が襲撃されたと言っていた。自衛隊と同型の最新式ライフルを持っているが、どう見ても自衛隊じゃない。 こっちもライフルを持っているが、暴動の鎮圧に(勝手に)協力した時、去り際に自衛用にかっぱらってきた物だ。
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